夢見る頃を過ぎても

When I Grow Too Old To Dream...

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母のこと

2007.02.14 (Wed)

1月31日は母の誕生日であった。遅れたが2月2週の土曜日に実家にお祝いに帰った。本当は、もう一週ずらしたい理由があった。抜いたばかりの親知らずが鎮痛剤が切れると激痛が走るのだ。でもこれ以上遅れてもお祝いとしてなんだかマヌケだと思い母に「今週行くからね」と連絡をした。


母は大変、料理が好きなヒトで、その日もから揚げ、お煮しめ、ポテトサラダ、湯豆腐、そして手作り握り寿司と腕を振るってくれた。「パパ(私の父)にオトコの料理教室って言う市民講座を申し込んできたのよ」と母が言う。右にあるものを左にも直さない父であり、半ば強制的に料理教室に入れようとする母の行動が少々意外であった。
「いいぢゃん。インスタントラーメンも作れないヒトだからねえ。少しは家事を覚えてもらわないとね」
「ほら、見て。パパのエプロンも買ってきたのよ」
「これ着けて料理するの?この父が。想像できん、とイテテテ☆」

また親知らずが痛み出してきた。
「ちょっとアンタ大丈夫なの?歯。無理しないで来週でも良かったのに」と母。
「あ〜・・・薬飲めば大丈夫だよ」


「オバアチャン。お誕生日おめでとう」と私の娘はオバアチャンとオジイチャン、私たち家族の絵を書いてプレゼントした。バアチャンは、とても嬉しそうだった。
翌朝、朝ごはんで母はお赤飯を炊いてくれた。おめでたいことがあるとお赤飯。だから誰かの誕生日にはお赤飯。自分の誕生日にも当然お赤飯だった。



・・・その次の日の夜、家族みんな寝ていた我が家に病院から電話が入った。「母が救急車で運ばれた」と。その明け方母は亡くなった。



原因は、わからない。わからないから死亡診断書も「呼吸不全」とだけ書かれた。いつのまにか親戚もかけつけて何が何やらで御通夜の準備になった。私は実家に帰り母が帰ってくるので布団の準備などをした。ふと台所に入ると、まだ母が作ったお赤飯がほんの少し残っていた。
私はそれを箸も使わず手づかみで食べた。最後の赤飯が自分が天国行く日の節目の赤飯とは。なんてスゴイ母なんだ・・・。すべて一粒残らず手づかみで食べた。
ついさっきまで元気で(太っていて血圧は高かったけど)いたヒトだったから変な言い方だが死に顔もすごく綺麗で「ホントに死んでるのかなあ」と思った。今にもムックリと起き上がりそうな母だった。あ、そういえば親知らずが痛まない。病院に呼ばれてから鎮痛剤飲んでない。母が歯痛も一緒に持っていってくれたんかな、と思った。通夜、葬式。私は不思議と泣けなかった。あまりにも突然すぎてドラマでも観ている感覚であった。実感させられたのが納棺の時で「最期のお別れ」の時だった。ああ、母は焼かれてしまうんだなあ・・・と最期の最期で出た言葉は「ママ・・・!」だった。私は子供の頃は母をそう呼んでいたがいつからか照れくさくて母のことを呼べなくなっていた。「ねえ」とか娘が生まれてからは、もっぱら「バアチャン」と呼んでいた。ママと何度も呼び号泣した。ああいう時、人間はそのヒトが一番好きだった頃の自分に戻るのだろうか。




あれから丸六年がすぎた。この間に日曜日に無事に七回忌法要を終えた。いまだ元気な父は、七回忌の準備にだいぶチカラが入ってしまい「結婚式の準備とまちがえてるんでは」と周りが見ていて心配になる程だった。細かく言うとイロイロとハプニングはあったのだが、ま、ご愛嬌と母も喜んでいるだろうと思うことにする。
父は母が申し込んでくれた料理教室を今だに続けている。(時々へんてこりん(笑)な料理を披露してくれる)私は、めでたいことがあれば母に習い必ず、お赤飯を炊いている。





確実に私たちの中に母は生きている。


母のこと

(父が選んだ七回忌のお返しの一つカタログギフト)



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